iDeCoの出口戦略:60歳以降の受け取り方と税金
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金づくりに大きなメリットをもたらす制度です。しかし、積み立てが終わる60歳以降に「どのように受け取るか」で、最終的な手取り金額は大きく変わります。
一時金としてまとめて受け取るのか、年金形式で少しずつ受け取るのか、それとも両方を組み合わせるのか。それぞれの受取方法によって課税ルールや控除の仕組みが異なるため、最適な出口戦略を考えることが欠かせません。
この記事では、iDeCoの受け取り方法と税金の仕組みを初心者向けにわかりやすく解説し、モデルケースを交えながら出口戦略を考えるヒントを紹介します。40〜50代で資産形成を進めている方や、FIREを目指す方にも役立つ内容です。
iDeCoの受取方法の基本
iDeCoの積立金は、60歳以降に以下の3つの方法で受け取れます。
- 一時金方式:まとまった資金を一括で受け取る。
- 年金方式:5年以上20年以下の期間で分割して受け取る。
- 一時金+年金方式:一部を一時金、残りを年金として受け取る。
受取開始年齢は原則60歳ですが、加入期間が10年未満の場合は61歳以降になるなど条件があります。
👉 詳細は国民年金基金連合会 公式ページで確認できます。
一時金として受け取る場合
一時金方式は、退職金のようにまとまった額を受け取れる点が魅力です。
課税上は「退職所得控除」が適用され、勤続年数に応じて大きな控除が受けられます。
- 退職所得控除の計算式
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)
【例】35年間勤務+iDeCo一時金1,200万円の場合
退職所得控除額:800万円 + 70万×15年=1,850万円
👉 控除額が受取額を上回るため非課税に。
ただし、企業からの退職金と同じ年に受け取ると控除枠を共有するため、税負担が増える可能性があります。

年金形式で受け取る場合
年金形式は、老後資金を計画的に分割して受け取れる方法です。
課税上は「公的年金等控除」の対象となります。
- メリット
- 生活費を補填する定期収入として活用できる
- 税負担が分散されるため、一時金より有利なケースもある
- 公的年金等控除の例(65歳以上)
- 年金収入330万円まで:控除110万円
- 330万円超〜410万円以下:控除120万円
【例】65歳でiDeCo年金を年間60万円受給、公的年金を年間150万円受給
👉 合計210万円に対し110万円が控除 → 課税対象は100万円
一時金+年金の組み合わせ
一時金と年金を組み合わせる方法も可能です。
たとえば「一時金で住宅ローンの残債を返済し、残りは年金で生活費に充当する」といった使い分けができます。
- メリット
- 大きな支出に対応しつつ、老後の収入も確保
- 税制上も退職所得控除と公的年金控除の両方を活用できる可能性
ただし、企業退職金や公的年金との受給タイミングによっては課税負担が増すこともあるため、受け取り時期を慎重にシミュレーションする必要があります。
税制優遇と控除の仕組み
iDeCoの出口戦略を考えるうえで欠かせないのが控除制度です。
- 退職所得控除:一時金に適用。長く働くほど控除額が増える。
- 公的年金等控除:年金形式に適用。65歳以上は最低110万円の控除あり。
👉 ポイントは「他の所得との兼ね合い」。退職金、公的年金、企業年金を合わせた総額で課税が決まるため、最適な受け取り方は人によって異なります。
参考リンク:国税庁 退職所得の課税
モデルケース別シミュレーション
ケース1:退職金なし+iDeCo一時金1,000万円
→ 退職所得控除で非課税になる可能性大。
ケース2:退職金2,000万円+iDeCo一時金500万円
→ 控除額を超えるため一部課税対象に。分割受取を検討した方が有利。
ケース3:公的年金150万円+iDeCo年金60万円
→ 年金控除で課税所得が抑えられる。毎年少額受け取る戦略が安心。
ケース4:住宅ローン残債あり
→ 一時金で繰上げ返済し、残りを年金で受給するミックス型が合理的。
注意点
- 退職金と同時受取は注意:控除枠が重なるため税負担が増える。
- 受け取り時期は選べるが期限あり:原則70歳までに選択が必要。
- 投資の出口でのリスク:60歳以降も市場変動があるため、一時金受け取り時に評価額が下がるリスクがある。
- 最新制度改正をチェック:税制改正や制度変更により控除額が変わる可能性あり。
まとめ
iDeCoは「積立時に節税できる」だけでなく、「出口戦略」によって手取り額が大きく変わります。
- 一時金は退職所得控除が魅力
- 年金形式は公的年金控除で有利
- ミックス型は柔軟なライフプラン設計に最適
最適な方法は、退職金や公的年金の額、ライフイベントによって異なります。早めにシミュレーションして受け取り戦略を立てることが大切です。
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